超指向性を楽しめる

パラメトリック・スピーカー実験キット

こ のキットは、超音波を利用したパラメトリック・スピーカーを手軽に再現できるように設計してあります。パラメトリック・スピーカーは超音波が空気中を進行 する際に生じる歪を利用して、可聴領域に音を再現する仕組みです。超音波の変調にはDSB変調を採用していて、市販のパラメトリッ ク・スピーカーのような、歪の補正は行っていません。したがいまして、音楽の再生などには適していないことをご了解ください。下の動画は開発中のDFM変 調基板を使用したサンプルです。
最新のドライバー基板は、非常に高音質になっています。低音域が少し歪むことを除けば、ほとんどHiFiといえるレベルまで音質が改善しています。

お知らせ:
最新の情報はこちらでどうぞ。

現在、配布している基板はPWM駆動です。

2008年ごろから国内の電子工作系出版社に記事・企画などを
持ち込みましたが、いずれも没。結局、ドイツの「Elector」誌に
記 事が掲載されました。

CIMG6136.JPG

パラメトリック・スピーカーの仕組み(以下の記事は古いので最新はPWMになっています)

パラメトリック・スピーカーは超音波の直進性を利用して、非常に鋭い指向性を実現したスピーカーです。人間の聴覚は約20kHz程度までの音波を聞き取る ことができるといわれていますが、実際には20kHzよりもかなり低い周波数で、聞こえなくなることが知られています。年齢にもよりますが、せいぜい、 14kHz程度が聞こえればいいほうだといえます。

超音波を発生させるための素子は、ピエゾ素子と呼ばれる圧電現象を利用しています。キットでは、40kHzにピークを持った超音波トランスデューサを使用 しています。ピークの山が急峻なので、あまり幅広い帯域を通すことはできません。40kHzの超音波は、通常の人間にはまったく聞き取ることができませ ん。

超音波を人間が聞き取ることのできる音波に変換する方法はいくつか考案されています。そのひとつは、周波数の異なる2つの超音波源を利用して、超音波の差 にあたる周波数の音を再現する方法です。たとえば、40kHzと41kHzの超音波を出すと、その差にあたる1kHzの音がうねりとして聞こえてきます。 40kHzの超音波を搬送波として利用して、もう片方のスピーカーからAM変調した超音波を出すことで、2つの超音波が交差する付近に、可聴領域の音を発 生させることができます。この方法は、信号のない場合にもたえず超音波を出しつづける必要があるので、効率が悪いことが欠点です。


もうひとつの方法は、超音波をDSB変調して、空気中を超音波が進行するときに生じる歪を利用し、可聴領域の音を再現する方法です。左の画像は、音声信号 を40kHzでスイッチングした波形を表しています。この波形の包括線(頂点を結ぶ線)が空気中でひずみとして聞こえてきます。

DSB変調はアマチュア無線ではよく使われる変調方式です。本キットでは、アナログスイッチによるDSB変調を利用してパラメトリック効果を実現していま す。



DSB変調方式は、効率はいいのですが、空気の伝播による歪を利用しているので、音質が悪いという欠点があります。オーディオスポットライトやHSSは、 デジタル信号処理を使い、歪んだあとに元の音が再現するようにして、音質の劣化を防いでいます。本キットでは、こうした処理を行っていないので、音楽の再 生などには適していません。

キットの回路(現行のキットは、若干改良してあり、基板は手作りです)

回路は、オペアンプを利用したローパスフィルタにアナログスイッチで変調回路を構成してあります。アンプ部分は、東芝のAB級アンプ、TA8258HQを 使いました。15V〜35Vで使用でき、最大20Wの出力があります。キットでは、15V〜24Vで使用するようにしました。24Vで動作させるとかなり 熱くなります。

この回路は、ソフトウエアラジオの送信機ではよく使われる回路です。出力部分がオーディオであることと、アナログスイッチを駆動する信号がひとつだけ(ソ フトウエアラジオではIQ信号を使う)という点が違うだけです。

出力する超音波スピーカーは、試作では秋月電子で販売している直径10mmのトランスデューサを使いましたが、大きさが小さく効率がよくなかったので、 16mmのタイプを使用しました。

電源端子、出力端子はキットに含まれません。


回路はGPLです。ご自由にお使いください。右ク リックで画像を拡大できます。

キットの頒布

10月4日からキットの頒布を開始します。キットの頒布価格は予定です。変更する場合があります。
ソリューション画像


  • PWM変調基板+超音波スピーカー(10mmx48pcs) 12000円
  • ご希望の方は直接メールをください。

ご注文はハムスクエアか らもできます。

キットを動作させるには、15V〜30V、1A程度の直流電源が必要です。超音波スピーカーを組み立てるために135x95mm以上のユニバーサル基板が 必要です。本キットは実験を目的としたもので、実用的な回路ではありません。

現在、PWMキットになっています。


組立に関して

基板の組立は、抵抗、コンデンサの順に差し込んでください。背の低いパーツからハンダ付けしていくと作業が楽です。基板上のシルクと上の画像を参考にして 作業をしてください。

超音波トランスデューサーの取り付けには少し注意が必要です。極性があるので、プラスとマイナスを間違わないようにしてください。
ケースにリードがついているほうがマイナス。

丸いランドにプラス、四角いランドにマイナスを差し込んでください。

全体が平行になるように揃えてください。

音量が低い場合
電源電圧が20V以下では、音量が低いと思います。スピーカー基板との間に60uH〜200uHのインダクタを直列に入れてください。インダクタは、基板 用として入手できる小型のものが使用できます。

インダクタの調整を行うと、ラジオの音声などは、かなり聞きやすくなります。

可変インダクタは、中波ラジオなどに使われているフェライトバーに0.5mmのUEW線を約100回巻き、片側を紙やすりで削って作ります。超音波トラン スデューサーは、コンデンサとしてふるまいます。直列にコイルを入れることで直列共振回路を構成します。アマチュア無線家なら、アンテナと同じだとすぐに 理解できると思います。コイルのインダクタンスを調整することで共振周波数を微妙に変えることができます。(参考文献:沖電子デバイスMSA180データ シート、1998年12月)

現在、新しい変調基板を作っているところです。試作では、部屋の中で鳴らすには大きすぎるくらいの音量が出ています。壁や天井に反射し まくりの状態 です。音質もかなり改善して、ラジオのアナウンサーの声なら明瞭に聞き取れるようになりました。手元にはデジキーから届いた100W級のD級アンプのIC があるので、使ってみるつもりです。

開発中の基板ですが、ようやく回路が定まってきました。試作基板はすでにMAKEの会場で公開しました が、動作が不安定だったので、いくつかの改良を行いました。変調方式は、DSB and FM Mixed Modulatorです。アナログスイッチの駆動をPWMで行うことで、DSBだけの変調よりもさらに効率よく超音波トランスデューサーを駆動できます。 音質も大幅に改善しました。トップの動画サンプルで確認してみてください。回路図はGPLデザインライセンスです。




11月14日更新